2024年7月24日号
8/7 介護経営を徹底討論 あおいけあ加藤忠相氏 × ぐるんとびー菅原健介氏 × スターコンサルティングG糠谷和弘氏 × MCS杉本浩司氏
独自の理念で介護事業を行うあおいけあの加藤忠相氏とぐるんとびーの菅原健介氏。数多くの介護コンサルティングを行いながら大規模デイサービスを経営するスターコンサルティンググループの糠谷和弘氏。この3名に認知症教育に注力するメディカル・ケア・サービスの杉本浩司氏が加わり、今年の「住まい×介護×医療展2024in東京」の座談会でクロストークをしてもらう。事前に加藤氏、糠谷氏、杉本氏に語ってもらった。
――これからの認知症ケアについて
加藤 80代、90代になれば、認知症の人がマジョリティ。平均寿命が80歳を超え、超高齢社会が進む今の日本では、「認知症は誰もがなるもの」です。そんな時代に「認知症ケア」を真面目に考えていても意味がない。それよりも「この街で認知症の人がどう生活していけるのか」を考えていくことが、これから必要になります。
認知症カフェも、一時的には良いと思います。でも、「認知症の人がスターバックスで堂々とコーヒーを飲んでていいじゃん」という社会にするために何ができるかを考えた方が良い。
杉本 社会全体の認知症理解を促した方が早いんです。
加藤 僕は認定キャラバン・メイトとして藤沢市でも多数の認知症サポーター養成を行ってきましたが、当初は「認知症とは」「認知症の人にはこんな風に支援しましょう」というようなことを伝えていました。今は「みんな認知症になるんだよ」「なんで認知症を怖いと思ってしまうのだろう」といった内容を講義するようにしています。
杉本 僕も学生に授業をするとき、まず「君たちの一番大事な存在は」と問いかけます。すると大多数が「お母さん」と答えます。「お母さんは将来必ず認知症になる。それまでに君たちは社会をどうすれば良いと思う?」と問いかけるんです。そうするとみんな一生懸命考えてくれます。これからは国民一人ひとりがこの感覚を持つことが必要なのでしょうね。
加藤 「認知症の人の社会参加」なんていまだに言う人がいるけれど、それよりも認知症の人の「起用」ですよね。例えば認知症の人が色々な高齢者施設を回って住みやすい環境かどうかのチェックをバシバシ行うとか。それに対する対価を受け取って、どんどん稼げばいいと思います…
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――この座談会の見どころは
糠谷 加藤さんや菅原さんは、「カリスマ性」や「パワー」で事業を引っ張っていくタイプだと思います。経営はよく宗教にたとえられますが、まず理念を掲げて、チームでそれを実現していく形。
その対極にあるのが、規模を拡大し生産性を高めていく経営です。生産性を高める事業モデルはいわば再現性の高いモデルで、誰でも比較的簡単に目指せるものです。このお互い対極にある2つの経営の比較の中に、皆さんが学び取っていただけるものがあるのではないでしょうか。
杉本 2つの経営の比較で、スタッフの採用や育成などにも違いが表れてきそうですね。
糠谷 理念型の経営は、やはりスタッフの満足度が違うと思います。一方でどこまでスタッフが理想の介護についていけるのか、という点は僕も気になるところです。
杉本 効率性を求めつつ、理念に沿った介護を両立する方法もあるのでしょうか。
糠谷 僕はよく「利用者には小さい顔を見せよう」と言います。大規模で効率化を目指しながらも、利用者の個別ニーズに応えていく手法があるのです…