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死ぬまでにかかる費用を計算する

高齢者住宅・施設に入るための費用や資金を考える前に、これからの自分の生活で、死ぬまでにどれくらいのお金が必要になるのかについて知っておきましょう。

日本人の5人に3人は平均寿命より6年長生きする

高齢者住宅・施設への入居を考える上では、入居後、死ぬまでにかかるお金=コストについて、まずは大まかに計算し、その概要を把握しておきましょう。

現在、日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性は87.26歳といわれます。これはあくまでも平均の寿命で、いまや100歳まで生きる人も決して珍しくありません。実際に、2016~2017年の人口統計などを元にしたデータでは、死亡者がピークになる年齢は男女いずれも平均寿命よりおよそ6歳高くなっており、日本人の5人に3人が平均寿命よりも長生きをしています。

つまり、日本人のうち過半数の男性が87歳、女性は93歳まで寿命があるということです。そこで、少し余裕をみて夫婦共に100歳まで生きるとして、それまでにかかるお金を考えてみましょう。

夫婦2人で100歳まで生きた場合の収支

総務省の「家計調査(2人以上の世帯)」平成31年1月分によると、高齢者の多くが含まれる無職世帯の1カ月の平均支出は、26万880円となっています。

一方で、厚生労働省が発表した「平成31年度の新規裁定者(67歳以下の方)の年金額の例」を見ると、夫婦2人の老齢基礎年金を含む厚生年金の標準的な年金額は1カ月当たり22万1,504円で、毎月約4万円不足している状況がみえます。65歳から年金生活が始まると仮定すると、夫婦がともに100歳まで生きた場合、約1,654万円が足りないことになるのです。

1,650万円以上は将来への備えに

実際には、夫婦のいずれかが先に亡くなるでしょうし、そうなると世帯としての支出は前述の金額よりも減り、同様に年金収入も減額されますので、このような数字にはなりません。

しかし、大まかなイメージとして、夫婦が共に100歳まで病気や要介護状態にならず、今の自宅で平均的な暮らしをするとして、65歳時点で年金収入以外に、およそ1,650万円、80歳になったときには950万円ほどの資産が必要だということになります。しかし実際には、医療費や介護費用等がかさみ、必要額はもっと増えるでしょう。高齢者住宅・施設への入居を考えるなら、さらに高額な資金が必要となります。

「家計調査」の住居に関する費用は?

ここまでは、夫婦が65歳から共に100歳まで生きた場合にかかるお金について、平均的な世帯の支出や老齢年金を含む厚生年金の標準額を元に「65歳時点で年金収入以外に最低でも1,650万円ほどの資産が必要である」と考えました。

しかし、ここで注意していただきたいのは、上記の試算では、自宅生活での支出における住居に関する金額がとても低くなっていることです。改めて総務省の「家計調査(2人以上の世帯)」平成31年1月分の無職世帯の部分をみると、住居に関する消費支出の合計は2万5,707円となっており、その内訳は、家賃地代3,503円、設備修繕・維持1万1,102円、設備材料3,665円、工事その他のサービス7,437円となっています。

つまりこれは、主に持ち家の世帯の支出であると考えられ、高齢者住宅・施設での生活を考えると、かなり乖離した数字であるといえるでしょう。

特養や有料老人ホームの費用

高齢者住宅・施設の入居にかかる一時金や毎月の費用はさまざまであり、詳しくは「特養・老健・介護療養型医療施設・介護医療院の費用」のページで解説しますが、ひとり当たり特別養護老人ホームの場合は、入居一時金なしで第4段階なら介護費用を含めて毎月13~15万円程度の費用がかかります。

介護型の有料老人ホームであれば、基準レベルの施設の場合、月払い方式で、毎月の費用は約20万円くらいでしょう。なお、これらの高齢者施設の費用には、居住費のほかに食費、生活支援サービスなどの費用も含まれています。

施設での暮らしは持ち家よりコストがかかる

もう一度、前記総務省の家計調査の内訳を整理すると、無職2人世帯の毎月支出総額26万880円のうち、住まい・食費・水道光熱費を合計すると11万873円となります。一方で、食費や水道光熱費も含まれた特養の毎月のホテルコストは夫婦2人なら22~25万円、有料老人ホームの場合は同室だと約35万円ですから、その費用の差額は、特養の場合で11~14万円、有料老人ホームでは24万円にもなります。

こうした試算の上で、夫婦2人が80歳から施設に入る場合と自宅で過ごす場合を比較してみましょう。持ち家で施設に入らないときの「住まい・食費・水道光熱費」の合計は20年間で約2,660万円であるに対し、介護費用をのぞいて特養の場合は5,280~6,000万円、有料老人ホームは8,400万円がかかります。

すると、持ち家での暮らしの資金に対して、特養の場合+2,620~3,340万円、有料老人ホームの場合は+5,740万円の資金が、年金不足分に加えてさらに必要になるということがわかります。

ただし、この比較には介護費用は含まれていないので、実際には何歳からどこで介護生活を送るかで、金額差は大きく異なってきます。自宅生活では重度の要介護状態になると介護保険だけではまかなえなくなり、利用限度額を超えた分が10割負担となって施設での介護費用を大きく上回るケースも考えられます。資金計画はできるだけ具体的に、これからの生活を想定した上で考えることが大切です。

出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社​

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