東急イーライフデザイン(東京都港区)吉野一樹社長
「グランクレール」などのブランドでシニア住宅を運営する東急イーライフデザイン(東京都港区)は、都内でサ付き住宅と分譲マンションが共存する「世田谷中町プロジェクト」の開発を進めている。今後はターゲット層の拡大およびソフト面の強化にも注力する。吉野一樹社長に詳しく聞いた。
──現在、老人ホームなどのシニア住宅を15棟運営しているが、今後の開設予定は。
吉野 「世田谷中町プロジェクト」として来年7月、東京都世田谷区で「グランクレール世田谷中町」(シニア住宅176戸・介護住宅75戸)と東急不動産の分譲マンション「ブランズシティ世田谷中町」(252戸)が共存する1万平米規模の「街」が誕生します。これは、東京都の「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」の第1号プロジェクトとして選定されています。
──同プロジェクトでは、他にどのような事業を予定しているか。
吉野 昨年同区用賀で始めた会員制の生活サポートサービス「ホームクレール」のサービスを入居者及び地域住民に向けて提供します。東京都市大学などの教育機関との交流や産学連携によるコミュニティづくりを図り、シニア住宅の入居者が様々な世代の地域住民と触れ合える場を創ります。そのほか、介護事業所や認可保育所を整備し、地域に開かれた街づくりを目指します。
──今後も事業の方向性としては、高級路線でいくのか。
吉野 今後はアッパー層だけではなく、ミドルアッパー層もターゲットとしていく方針を打ち出しており、価格帯および開設エリアの拡大を図ります。これに伴い、新ブランドの立ち上げも視野に入れています。また、シニア住宅を始めて13年が経ち、割合は少ないものの確実に入居者の中には要介護者が増えています。これまで当社が手掛けてきた物件は、ハード面のインパクトが大きかったかと思いますが、今後はハード面に加え、ソフト面も強化していかなくてはいけないと考えています。
──ソフト面で新たに始めたことは。
吉野 昨年4月には東京医科歯科大学歯学部附属病院総合診療科の外来医長を座長に招き、「感染対策委員会」を新たに立ち上げました。月1回、各シニア住宅を巡回して感染症対策の改善活動を実施しています。
そのほか、順天堂大学と提携し、同大学監修のもと、シニア住宅で「ロコモ予防プログラム」の導入を始めています。またフィットネスクラブ「東急スポーツオアシス」では、同大学大学院スポーツ健康科学研究科の准教授によるセミナーなどを開催したりするほか、ロコモ・認知症予防プログラムの開発も進めたりしています。
これまでも各事業所で感染症対策や認知症ケア、介護予防を実施してきましたが、その内容や質には差がありました。これらを本部でまとめることで、「東急」のスタンダードを作り、サービスの均一化を図かっていきます。
──そのほか、新規事業の予定はあるか。
吉野 これまで積み重ねてきた実績を活かしつつ、新たな形態のサービスを展開していきます。今後は高齢者住宅の運営受託やコンサル事業、訪問看護事業などの可能性も大いにあると思います。