WEB版先行/限定号  6面 掲載

介事連斉藤氏、自民党の公認獲得 「介護のルール、現場主導で」

2025年3月9日

一般社団法人全国介護事業者連盟(東京都千代田区)理事長の斉藤正行氏は38日、介護業界の声を政治に届け制度改革を推進するために、参議院議員選挙における自民党の公認候補者となった。同連盟の成長とともに、業界の課題解決に取り組んできた斉藤氏は、介護職員の処遇改善および介護報酬の引き上げを2本柱に掲げる。今回の挑戦の背景や具体的な方針について話を聞いた。

 

 

一般社団法人全国介護事業者連盟 斉藤正行理事長

 

 

処遇改善急務、27年改定で年収500万に

 

――自民党の公認を得た背景は

斉藤 これまで当連盟が取り組んできたことを形にするための大きな挑戦が「国会に我々介護や障害福祉業界の代表者を送り込む」こと。今後高齢者が増え続けて現役世代が減少していくという人口構造上、報酬もマイナスで適正化されていく基調がある。私自身全国各地の事業者の方々の声を聞いているが、現場は今の物価高にも対応できておらず、倒産件数は過去最多、介護従事者の抜本的な処遇改善は先延ばしになっているという状況を見るにつけ、これを解決しなければいけないという思いで今回の決意に至った。介護保険制度改革や法改正、報酬改定が3年ごとに行われる中で、現場の意見が届きにくいという課題を多くの介護事業者が感じている。その一因として、介護業界の団体が法人やサービスごとに乱立し、声が分散してしまっている現状がある。

 

当連盟は、2018年の設立から6年半で全国47都道府県に支部を設置し、現在は5900社、36000以上の事業所が加盟する業界最大規模の団体に成長した。この組織を通じて政府や厚生労働省への要望や提言を行ってきたが、依然として影響力には限界があり、最終的な意思決定には政治的な力が必要だと実感している。

 

介護報酬は半分が税金、半分が保険料で賄われており、政治的な決定によって配分が変わる。しかし、介護のルールは介護現場主導で決めていきたい。私たちの声を確実に反映させるには政治の場での発言力が不可欠であり、そのために今回の挑戦を決意した。

 

 

――実現に向けて取り組む施策について聞かせてください

斉藤 早急に実現すべきと考える重要な施策は2つ。1つは、介護従事者の全国平均年収を500万円に引き上げることだ。現在の介護職員の平均年収は約350万円で、全産業平均の450万円と大きな開きがある。物価上昇に伴い、他産業が35%の賃上げを行う中、介護業界は2%程度にとどまっており、人材確保がさらに困難になっている。

 

この目標を2年以内に実現し、274月の報酬改定時には500万円を達成する計画だ。現実的に実現可能なものと考えている。また、介護職員だけでなく、ケアマネジャーや他の関連職種の処遇改善も必要不可欠。特定の職種だけが恩恵を受けるのではなく、介護業界全体の処遇を引き上げることが重要だ。

 

業界としてしっかりと政治的な力を示すことができれば、本来介護に当てるべき財源が優先的に回されるはずだ。そのためにも、自立支援・重度化防止や科学的介護の実践、生産性向上といった現場改革も推進していかなくてはならない。

 

公的資金による処遇改善は、事業者の負担軽減にもつながる。現在、多くの事業者が人材確保のために高額な紹介手数料を支払っており、これが経営を圧迫している。介護職員の年収を500万円にすることで他産業と競争できる水準になり、人材の定着率が向上し、紹介会社に頼るコストを削減できる。

 

 

――もう1つの重要課題とは

斉藤 介護報酬の引き上げだ。27年の報酬改定時に基本報酬を大幅に引き上げる必要がある。現在の物価高や賃金の上昇に対応しなければ、事業者の経営が成り立たなくなる。

 

地方におけるサービス提供の効率性の問題もある。都市部と比べて移動距離が長く業務効率が悪いにもかかわらず地域単価が低い現状があるため、報酬体系の見直しも必要だ。

 

この挑戦は、介護業界の未来を左右する重要な転換点となる。業界全体の声を政策に反映させるために、政治の場での発言力を確保し、必要な改革を実現していきたい。

 

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