2025年1月22日号 15面 掲載
能登半島地震1年 復興長期化〝人離れ〟懸念 職員引退相次ぐ
震災から1年が経過した能登半島では、復興の長期化によって現地の人々の間に閉塞感が漂っている。それでも復興に向けて人々が気力を絶やさずにいられるのは、全国からの支援があるからだ。介護事業者団体をはじめ被災地を支援した団体に活動を振り返ってもらった。
〝地域協働〟再生の鍵
■施設などで訪問入浴提供
一般社団法人日本在宅介護協会および一般社団法人全国介護事業者協議会は、2024年2月初旬から3月にかけて、能登町・輪島市の高齢者施設並びに避難所を中心に入浴支援を行った。3月末までに延べ名以上の介護職が現地入りし、1000人以上に温かい風呂を提供した。
2月4日、訪問入浴車2台、給水車1台体制で被災地に乗り込んだ。
給水車1台、訪問入浴車1台の「奥能登チーム」は、施設などの直接訪問を担当。受援者側の受け入れ体制が整えやすいように、決められた曜日に指定の施設を訪問する形式をとった。
もう1台の訪問入浴車は「スポセンチーム」として、1.5次避難所「いしかわ総合スポーツセンター」を中心に活動を行った。同センターでは幸いにも水が使用できたため、センター内の浴室に持参した浴槽を設置して入浴支援を提供。この方式のため訪問入浴の経験がない介護職員も支援に参加できるようになり、活動の幅が広がったという。
先日1月7日、同協会らは復興の現状について視察に向かった。現地施設へのヒアリングを通じ、職員の離職が相次いでいる現状が明らかになった。「高齢の職員も多く、なかには70歳以上の人もいた。こうした人が震災を機に離れていき、施設側としてもそれを引き留めることはできなかったと聞く」(日本在宅介護協会 佐々木隆之事務局長)
■電話でメンタルケア
県の行政機関である「石川県こころの健康センター」は被災者及び支援者のメンタルケアを行っており、電話相談を受け付けている。同センターには昨年1~11月末までに734件の電話相談が寄せられている。「体調がすぐれない。よく眠れない」という悩みや、家族のことや将来についての不安を口にする人が数多い。
「介護施設などにおいては人手不足による多忙で、職員のメンタルが悪化している」とセンター職員は言う。
■コミュニティ再生へ
社会福祉法人佛子園(石川県金沢市)は当初、物資搬送や、福祉避難所の運営などを行った。
状況がひと段落した後、青年海外協力協会と連携した仮設住宅入居者の見守り活動や移動支援で住民を支えた。また、法人が運営する温泉で入浴支援を提供。この施設は9月の豪雨災害で浸水被害に遭ったが、住民らの協力で被災後12日間で復旧を果たした。
現在は避難生活で分断した地域コミュニティの再生に向け、仮設団地にコミュニティセンターを6ヵ所開設する取り組みを進めている。入浴や食事、相談や介護予防など福祉サービスが受けられる住民主体の集いの場を提供する。
「これら活動に共感し、法人に新たに加わった職員もいる」と清水愛美理事は語る。
計画が順調に進めば4月20日、輪島マリンタウン内に第1号施設がオープンする。