2025年1月1・8日号 3面 掲載
【クローズアップ ホスピス型住宅②】ツクイ、シーユーシー・ホスピス、霞ヶ関キャピタル 各社の取り組み
■各社の取り組み
愛知県豊田市などでホスピス型住宅を展開するツクイ(横浜市)の竹澤仁美医療事業推進本部推進本部長は、「介護保険におけるケアマネジャーと介護事業者との関係が、ホスピスでは医師と訪問看護師の関係に変わるだけ」と語る。
同社では、医師の指示期間にかかわらず、毎月訪問看護計画を見直す。訪問看護計画の変更後は医師の確認が必要なため、毎日のように密なコミュニケーションを取る。「コンプライアンス室と連携することで、法令に守られている意識のもと看護師は働ける」
霞ヶ関キャピタルでも、日々の経過を見ながら都度訪問看護計画を調整。病院やケアマネジャー、地域包括支援センターにもフィードバックできるような運用・管理を行っているという。
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<運営事業者 / シーユーシー・ホスピス>システムで内部監査
厚労省は昨年10月に訪問看護に関する基準通知を発出したが、そのような不適切なサービス提供を行っている一部のケースを除き、「ホスピス型住宅」を取り巻く現状の制度は当社にとって問題のあるものではないと考える。当社の例では、訪問回数が1日に1~2回の利用者もいるが、3回以上の訪問を必要とする、より症状の重い利用者ももちろんいる。
国の制度の如何を問わず、職員のスキル向上のための研修やケアプランチェックなどの精度を高めることに尽力してきたし、今後も強化していきたい。かねてよりグループ本体にリスクコンプライアンス室を設置し、内部監査機能を強めている。ケアプランチェックについては医師の指示書に従うことを原則とした上で、システムによる仕組み化を検討中。利用者の状態に応じて必要とされる標準のケアと照合し、それを基に個人用にカスタマイズしていくことで、負担を抑えながら何重ものチェックを行えるものを想定している。
当社は創業以来、ホスピス型住宅事業について「売上・利益よりもコンプライアンス」を基本理念として守ってきた。25年3月期も10 ヵ所のホスピス型住宅を開設予定、26年3月期にもすでに10ヵ所の開設が確定している。加えて、24 年10月に子会社化したノアコンツェル(札幌市)運営施設のうち、4施設の一部フロアをホスピスフロアに転換する予定だ。今後もニーズの高い地域を対象に、M&Aを検討していく。
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<運営事業者 / 霞ヶ関キャピタル>新モデルで「暮らし」提案
昨今、ホスピス型住宅が社会的に問題視されている点について重く受け止めている。現在、内部統制と併せて、医療機関および在宅関係者との日々の情報共有などを行い組織の内外から体制強化に努めている。
約1年半前に開設した「CLASWELL仙川(70室)」では、各入居者の状況に対応した訪問看護計画の作成を第一に取り組んできた。当社は、利用者の状況に基づき指示書を作成する主治医とよく連携して、病院やケアマネジャー、地域包括支援センターにもフィードバックできるような運用・管理を行っている。
CLASWELLは現在都内に2棟。がん末期や別表7、8の入居者の割合はほぼ100%で、ALS患者など、開設当初からの入居者もいる。訪問看護は、訪問回数上限を超えると施設サービスとして吸収しているのが現状だ。
当社の開発力を活かしながらも、自社運営するというのが当社のポリシー。「新しいモデル」を生み出すには、自社運営が必要だからだ。
立地がよく駅近で、居室は18平米を基本とし、共用部も充実させることで「暮らし」の機能を重視する。既存施設では、地域との交流やイベント開催にも注力している。自治会に入ったり、地元の和食店とコラボしたイベントも行ったりした。
今後、来客しやすい施設やリハビリ環境を整備した施設、屋上庭園を設けた施設など、「暮らし」の選択肢を示すことのできる多様なモデルを打ち出したい。当社の強みであるホテル事業との連携なども視野に、現在11棟を開発中だ。