2024年9月4日号 1面 掲載
【コラム】介より始めよ
2024年9月4日
「咳をしても一人」。病床に伏した俳人尾崎放哉が、その孤独感を研ぎ澄まされた言葉で表した一句だ。
この句から、尾崎はさぞ繊細な人なのだろうと想像できる。だが実際は、酒癖は悪く会社の勤務態度は自由気まま。金の無心はするし妻にも逃げられ、近所の人からも嫌われる始末。病床でひとりぼっちの尾崎。それも致し方なし。
警察庁は今年1~6月までの間に全国の警察が調査などをした遺体のうち、およそ3割が自宅で発見された1人暮らしの人で、約4000人は死後1ヵ月以上経って発見されたものだという報告を出した。政府はこの結果を、孤独死・孤立死対策へ役立てる意向だ。
人に迷惑をかけ倒した尾崎の最期はというと、意外にも寺の住職や近所の主婦に見守られながら安らかに旅立ったようだ。その生き方のどこかに、孤独死・孤立死対策のヒントがあるかもしれない。
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