診療報酬の訪看減算議論 高額請求、頻回訪問是正か
政府の各審議会では、診療報酬における訪問看護の同一建物減算の検討が始まった。看取りの受け皿として在宅領域の医療ニーズは増大している。訪問看護が果たす役割を踏まえ、市場や現場の実態を適切に反映する必要がある。
診療報酬の同一建物減算は、同一日に同一の建物に居住する3名以上に訪問看護を行った場合に適用される。通常の訪問看護基本療養費より減額された額を算定することで対応してきた。しかし、「条件が緩く、減算による抑止効果はあまりない」とある業界関係者は述べる。
利用者1月あたりの請求額をみると、全体の1%強が60万円以上、最大値が116万円となっている。
一方で介護報酬では同一建物、同一・隣接敷地内の建物に訪問看護を提供すれば減算となり、診療報酬より厳しい条件となっている。10月20日の中医協では、支払い側は「介護保険の仕組みに合わせるべき」と提起した。「2名回るか3名回るかで利用者負担が変わる点も、違和感がある」と公益財団法人日本訪問看護財団の佐藤美穂子常務理事は述べる。
11月1日には、財務省が訪問看護の適正化を求めた。医療保険の訪問看護事業を行う民間企業の中には、経常利益率が25%以上となる企業もあることを例示した。
訪問看護事業者側だけでなく、居宅介護支援事業所への規制の必要性についても論点に挙がっている。11月6日の社会保障審議会で厚労省は、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅において、入居者の6割以上が併設や隣接のケアマネ事業所でケアプランを作成していると指摘。同一建物減算をケアマネ事業所にも導入する案を示した。
各検討会の委員を務め、居宅介護支援事業所を複数運営するマロー・サウンズ・カンパニーの田中紘太社長は「ケアマネ事業所に減算がないことの非合理性は以前から指摘されてきた」と述べる。
「医療サービスのケアプラン作成を義務化し、点検後に問題のあるプランの是正を義務化するなどの検討も必要」(田中社長)。
しかし、退院後の受け皿のニーズの高まりとともに、在宅領域の医療サービス提供体制強化は国も推進するところだ。特にがんや難病の人をはじめ医療依存度の高い人を対象に専門的なサービスを提供するホスピス住宅では、多数回の訪問を要する側面がある。
別表7・8に該当する疾病や特別訪問看護指示書を受けた場合には1日2~3回の訪問は可能だが、ベストリハの山本健太取締役本部長は「看取り間際の入居者に対し、1日に3回の訪問では対応できない」と述べる。「気管切開など入居者の状態によっては多数回の介入が必要な人もいる。そうした人に実質無報酬で対応している現状を考慮してほしい」
一方で、佐藤常務理事は「ホスピス住宅が看護師を雇用するモデルなども模索すべき」と見解を述べる。
適切なサービスでニーズに応える事業者がいることも鑑みると、介護報酬における同一建物減算同様、慎重な検討が必要だ。