【トップインタビュー】木下の介護 佐久間大介社長
人手不足、介護報酬引下げ、入居者虐待問題など高齢者住宅運営事業者には、様々な逆風が吹いている。こうした中、各社はどのような舵取りを行っていくのだろうか。大手を代表して、長谷川介護サービス(東京都豊島区)、木下の介護(同新宿区)に話を聞いた。
今冬より新規開設加速 既存物件の入居率改善
「100人の営業 居宅訪問を徹底」
――しばらく新規開設の動きが止まっていました
佐久間 建築費高騰などの問題を受け、昨年度から今年度上期については、新規開設をストップしていました。その間は、入居率の向上と、離職率の低下を最優先事項として取り組みました。
――入居率はどの程度だったのですか
佐久間 昨年度は70%台と80%台を行ったり来たりしている状況でした。5000室以上を運営していますので、一気に何%も上げることは難しいのですが、現在は82%まで上昇しています。現在、当社には営業専属社員が約100人いますが、彼らが当社の事業展開エリアである1都3県及び山梨県の居宅介護支援事業所と地域包括支援センターをまめに訪問することを徹底しました。また、高齢者住宅紹介事業者に対しても、当社で紹介事業者スタッフ向けの勉強会を企画したり24時間看護体制の施設を見学してもらったりして関係性の強化に努めています。
――離職率低下については
佐久間 具体的な数値は非公開ですが、半分近くまで下がってきています。これまで十分に機能しているとは言えなかった社内評価制度を再整備したり、研修メニューを実態に即したものに見直したりしたほか、賞与額や昇給率の見直し、休日増などの処遇改善を図りました。また、新卒採用のスタッフの方が、離職率が低いことから、近年は新卒学生の採用に力を入れています。新卒入社数はここ数年100名程度ですが、来年4月入社の新卒学生は200名の採用を目標としています。
「消費者ニーズは『低価格』志向に」
――今後の事業展開については
佐久間 12月にさいたま市(北与野)に特定施設を開設します。その後は来年3月までに横浜市、神奈川県伊勢原市、千葉県我孫子市、東京都世田谷区で開設を予定しています。また、来期は7ヵ所の新設を計画しており、事業規模の拡大に努めていきます。
当社の主力ブランドは「リアンレーヴ」「ライフコミューン」ですが、近年は消費者が「手厚いケア」よりも「安い入居費用」を求めていることもあり、新規開設物件については人員配置3対1の「リアンレーヴ」が主になるでしょう。ただし、高額所得者層が多い地域などでは利用者のニーズも異なりますので、人員配置を厚くするなど、個々にプランニングしていきたいと考えています。
――介護報酬改定への対応などは
佐久間 今後、報酬額が上がっていくことは考えにくいですので、加算でそれをカバーしていきます。これまで加算の取得については重視していなかったため、算定要件を満たすのに「請求業務が煩雑になる」などの理由から算定してないこともありました。今後は、入居者の状況など各ホームの事情に鑑みて、算定できる加算については、積極的に算定するようにしていきます。売上高については、前期比で3~4%程度増の240億円弱を見込んでいます。