2025年2月5日号  10面 掲載

【連載◇未来の介護を創るDX】データサイエンス民主化の未来 / ヤマシタ 小川邦治氏

2025年2月10日

 

AI活用で課題解決や意思決定

 

前回は、ローコード・ノーコードツールという開発支援技術を活用することで、業務部門の現場社員がニーズに即したアプリやシステムを自ら開発する市民開発についてご紹介しましたが、同様の変化がデータサイエンスの領域でも加速しています。従来データサイエンスは、統計やプログラミングなど高度な専門技術を持つ必要がある領域とされてきました。それが、生成AIの進化と普及に伴い、高度な専門技術をAIやAIを組み込んだツールで代替できる場面が増えています。そのため、膨大なデータをもとにAIが生成した内容や結果を適切に解釈し、現実の問題解決や意思決定に結び付けるためのスキルの重要度が相対的に増しています。

 

そうした中で注目されているのが、専門家ではない業務部門の社員が、AIやAIを組み込んだツールを活用してデータ分析を実行し、課題解決や意思決定支援を担う「シチズンデータサイエンティスト」という役割です。ヤマシタでは、生成AIが組み込まれた分析ツールであるMicrosoft Fabricをアジアで初導入すると同時に、社員がシチズンデータサイエンティストとして活躍できるよう仮説構築力や選択力、チームや関係者と円滑にプロジェクトを推進するコミュニケーションスキル、データをもとにしたロジカルシンキングといったスキル習得のサポートに着手しています。

 

介護業界では、行政主導のもと「データを集める」仕組みは徐々に整備されつつありますが、次の段階として「集めたデータを活用し、現場での問題解決や意思決定に活かす」ための仕組み作りと人材育成が急務です。ここで鍵となるのが、シチズンデータサイエンティストの存在です。現場視点・論理的思考・関係者との調整力を兼ね備えた人材をいかに確保・育成し、組織として有効活用していくかが、介護業界におけるDX推進の成否に大きく影響すると考えます。

 

データの標準化、ツール活用のルール作り、人材育成と組織づくりを一体的に進めれば、介護事業者が保有する貴重なデータは、業界全体のサービス品質向上と経営効率化のための強力な武器になります。変化のスピードが早い今こそ先手を打ち、業界全体としてシチズンデータサイエンティストを活用する体制を整え、持続的な成長と社会的価値の創出を目指していきましょう。

 

 

 

ヤマシタ 社長室DX推進責任者 小川邦治
2005年早稲田大学大学院商学研究科を修了後、日本電気を経て、アクセンチュアに入社。同社では、製造流通業向けのコンサルティング業務に従事し、業務・システム改革、IT戦略立案/ 組織改革、DX推進支援など多くのプロジェクトを支援。22年12月からDX推進責任者としてヤマシタに参画し、デジタルを活用した社内改革や新規ビジネスの構想・推進などを担当。

 

この記事はいかがでしたか?
  • 大変参考になった
  • 参考になった
  • 普通
全ての記事が読める有料会員申込はこちら1ヵ月につき5件まで閲覧可能な無料会員申込はこちら

関連記事



<スポンサー広告>