2024年12月4日号 終面 掲載
福祉職の魅力を現場から 都がPR ムーブ起こし社会的価値向上へ
東京都は、今年度より新たに11月を福祉人材集中PR月間と位置づけ特設ページを公開した。「#なにゆえ私が福祉職」をテーマに業界団体や福祉現場の職員と連携して魅力を伝え、人材の確保や定着につなげていくことがキャンペーンの目的だ。東京都福祉局企画部の山岡亮一福祉人材・サービス基盤担当課長と、運営を受託したBlanket(東京都文京区)の秋本可愛社長に話を聞いた。
Xトレンド入りも
――キャンペーンの主旨や取り組みについて
山岡 2025年を目前に控え、業界を挙げて福祉の仕事の魅力を発信すべく新たに取り組んだ企画です。都民への調査結果によると、福祉の仕事に対するネガティブなイメージは未だ根強い。魅力を発信するムーブメントを創出したいと考え、総合評価方式による公募を行いました。
秋本 現場の方々は日々仕事の魅力を感じながら働いているのに、その思いが伝わっていない。そのことに対して、本人たちがもどかしさを抱えているという現状があります。「どうせなら多くの福祉職を巻き込み、『自分語り』をしてもらえるきっかけをつくりたい」と考え企画を提案。都がハローキティとタイアップしていることから、オリジナル画像を作成できるジェネレーターを作り、SNSにアップできるようにしました。
――どのように活用されたのでしょうか
山岡 現場職員が自らの言葉で魅力を発信するだけでなく、法人が求人情報とともに投稿するなどの活用も進んでいます。働いている職員の想いや姿が見えることは、求職者にとって共感や安心につながるのではないでしょうか。また、キラキラした魅力だけでなく、リアルな声を届けていくことも今回の企画の肝。採用後のミスマッチ防止にもつなげられると思います。
秋本 多くの方々が参加してくれたことで、11月11日の「介護の日」には10時台から1日中何度も、翌日もXでトレンド入りしました。福祉の仕事に就いた「きっかけ」や「やりがい」に触れてもらうだけでなく、「同業者のいろんな思いを知ることができた」など福祉職が互いにエンパワメントされる機会にもなっています。画像生成数は975件(11月27日時点)、主にXとインスタグラムでアップされています。
――キャンペーンを通じて叶えたいこととは
山岡 福祉の仕事に興味を持ってもらい、身近でやりがいのある仕事として面接を受けてみようといった行動変容に結び付けていきたい。また、福祉の仕事の社会的評価を向上させたい。進路相談の際などに親や学校の先生から反対された、他業界を薦められたといったケースが少なくないと聞きます。同じ境遇だった方のメッセージが背中を押すものになればいいなと思いますし、学校の先生にも働きやすい職場が増えているといった業界の情報を届けたいです。
秋本 「福祉でしか採用されなかったために入職したが、こんな思いで続けている」といったリアリティのある投稿も多く、「入口はなんだっていい」と感じさせてくれます。
――東京都、Blanketそれぞれの今後への思いを聞かせてください
秋本 よく私自身がゲストになって魅力を発信する機会をいただきますが、私は福祉職ではありません。以前より、福祉職の方と「一緒に」魅力を伝えられる企画を考えたいと思っていました。現場の職員一人ひとりの思いが集結することによる力も大きいはず。福祉職とともに福祉の仕事の魅力を楽しく発信できる機会の創出に努めていきます。
山岡 福祉の仕事の魅力を最も的確に語れるのはほかの誰でもない、現場の職員だということを今回のキャンペーンで再認識しました。介護職員への居住支援特別手当などの人材確保施策の展開とあわせて、今後も社会全体に魅力を発信し、人材の確保・定着につなげていきたいです。