2024年10月2日号 11面 掲載
【連載◇未来の介護を創るDX】介護DXと生産性向上 / ヤマシタ 小川邦治氏
施設・在宅で業務効率化
前回のコラムでは「高齢者とテクノロジーの未来」をテーマに、介護におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の可能性について考えました。今回は、介護事業者の生産性向上を軸に、施設介護と在宅介護の未来を見ていきたいと思います。
施設介護では、多くの入居者に対するケアを提供するため、組織的な管理や効率的な運営が重要です。例えば、ロボットやセンサーを活用した業務の自動化です。見守りロボットや排泄ケア機器の導入により、介護スタッフの負担を軽減し、多くの利用者に質の高いケアが提供できるようになるでしょう。次に、データの活用による業務改善が挙げられます。入居者の健康データをリアルタイムで取得し、AIを活用してケアプランを調整することで、適切なケアを効率的に提供することが可能になります。
一方、在宅介護では、個別化されたケアが求められるため、DXの役割も異なります。まず、遠隔モニタリング技術を活用し、センサーやウェアラブルデバイスを使って利用者の健康状態をリアルタイムに把握できる環境が整えられていくでしょう。これにより、訪問回数を減らしながらも緊急時には迅速な対応が可能です。また、地域全体で利用者を支える地域包括ケアシステムの深化・推進のため、介護情報等を電子的に閲覧できる情報基盤の整備も開始しており、事業者間の連携を強化する新たな仕組みが形成されつつあります。
施設介護と在宅介護の双方で、DXはケアの質を高め、業務を効率化する重要な役割を担っています。特に、データの一元管理やAIの活用による自動化が進むことで、施設と在宅を問わず、一貫したケアが提供されるようになり、利用者も安心してサービスを受けられるようになります。また、現場の介護スタッフが自らシステムを改善できる「市民開発」の取り組みは、現場のニーズに即した迅速な対応を可能にし、スタッフが人間らしいケアに専念できる環境を整えるための鍵となります。同時に、テクノロジーを活用し、介護現場をより働きやすい場所に変えることで、介護職の魅力も高まり、業界全体の持続可能性が向上します。
私たちは、地域全体で支える介護の未来をテクノロジーと共に築いていきます。誰もが安心して暮らせる社会を目指して、共に力を合わせていきましょう。
ヤマシタ 社長室DX推進責任者 小川邦治氏
2005年早稲田大学大学院商学研究科を修了後、日本電気を経て、アクセンチュアに入社。同社では、製造流通業向けのコンサルティング業務に従事し、業務・システム改革、IT戦略立案/ 組織改革、DX推進支援など多くのプロジェクトを支援。22年12月からDX推進責任者としてヤマシタに参画し、デジタルを活用した社内改革や新規ビジネスの構想・推進などを担当。