2024年9月4日号  11面 掲載

【新連載◇未来の介護を創るDX】高齢者とテクノロジーの未来 / ヤマシタ 小川邦治氏

2024年9月10日

 

生活の質・意欲の向上に期待

 

介護におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、介護の質を向上させるだけでなく、介護人材不足や予防的ケアなどに広く寄与します。また、課題解決や高齢者のQOL向上にも大きな役割を担います。

 

初回となる今回は、高齢者とテクノロジーの親和性やテクノロジーによる身体拡張をテーマに、介護分野に応用可能な近年の技術進歩について伝えていきます。

 

高齢者にとって、複雑な操作が必要なデバイスやソフトウェアは使いづらく、抵抗感を感じやすい傾向があります。ゆえに多くの高齢者がデジタル社会から取り残されてしまうデジタルデバイド(情報格差)が問題となっています。しかし、生成AIや音声認識技術の向上によって、日常会話をしているような自然な言葉でデバイスを操作でき、より快適に、そして直感的にテクノロジーを利用できる未来が訪れようとしています。例えば、朝起きたときに「今日の天気は?」と声に出して聞くだけで、天気予報が返ってきたり、部屋の照明やエアコンを「少し明るくして」「温度をもう少し下げて」といった言葉で操作したりすることが一般的になるのです。

 

また、これまでできていたことができなくなったときにAR・VR技術は高齢者にとって新たな可能性を開きます。例えば、ARを活用して、家の中での移動をサポートしたり、薬の摂取タイミングを視覚的に通知することで、視覚的な補助が必要な方々の支援に役立てたりすることができます。また、リハビリやフィットネスでは、リアルタイムでフィードバックを提供し、効果的なトレーニングを実現します。さらにVRを使えば、自宅にいながらにして世界中の名所を巡るバーチャル旅行が可能になります。実際に旅行に行くのが難しい方でも、VRゴーグルをかければ、まるで現地にいるかのような臨場感を味わうことができ、新しい場所を訪れる楽しさや、忘れかけていた思い出の場所を再訪する喜びを感じられ、生活の質や意欲を大きく向上させることが期待できます。

 

総じて、生成AI、音声認識、AR・VRなどの技術の進化は、高齢者の生活を大きく変えるポテンシャルを持っており、身体機能を拡張させるための強力なツールとして、未来に向けて、高齢者にとってもますます重要な役割を果たすでしょう。

 

 

 

ヤマシタ 社長室DX推進責任者 小川邦治
2005年早稲田大学大学院商学研究科を修了後、日本電気を経て、アクセンチュアに入社。同社では、製造流通業向けのコンサルティング業務に従事し、業務・システム改革、IT戦略立案/ 組織改革、DX推進支援など多くのプロジェクトを支援。22年12月からDX推進責任者としてヤマシタに参画し、デジタルを活用した社内改革や新規ビジネスの構想・推進などを担当。

 

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