2024年3月27日号 13面 掲載
【経営戦略を実現する人財戦略 最終回】人的資本経営×DX/ヤマシタ 菅原聡氏
総括と課題から考える今後の人財戦略
この連載では経営戦略や人財戦略を実現するアプローチとその意義を紹介してきました。最終回となる今回は1年間を振り返り、来年以降の活動を通じて、さらなる進化をどう起こすかを紹介します。
この連載で最初に紹介したのが、HRBPです。経営と人財を繋げる役割を担うHRBPは価値創造機能を持つ重要な部門であり、重要指標や具体的な施策を決定します。当社では今期、職務を明確化して人財の量・質・時間の最適化と効率的なマネジメントを推し進め、KPI達成に貢献しました。現在は全職種の人財要件定義を完遂し、人財発掘に着手中です。
次に紹介したのが、長期ビジョンを達成するための逆算戦略立案に寄与した3つの時間概念の導入です。期間損益と連動する人財戦略に整合性を持たせるための重要な視点で、採用期間短縮、昇格機会拡大、給与約12%アップなどの成果を出しました。
また、人財DXについても取り上げました。戦略的人事実現のため、ITシステムによるデータの一元管理で人財DXを加速化。社内業務削減に加え、現在は1on1・採用面談の質の可視化、行動管理のための営業アプリ導入で生産性向上を図っています。
そして最後に紹介したのが、BSCと成功循環サイクルです。BSCによって、人財・業務プロセス・顧客・財務の4つの視点から戦略目標とKPI・CSFを定め、統合マネジメントの仕組みを作りました。例えば、人財面ではEXスコア(仕事のやりがい)と行動の因果関係分析で実績を挙げています。成功循環サイクルでは、目標・関係性・思考・行動・結果の5つの質をマネジメントすることで、成果拡大を図りました。特に関係性の質を高めるためにAI 1on1やAI採用を取り入れました。
この1年でさまざまな施策を実施してきましたが、ムダ取りによる業務の標準化・自動化、採用コスト削減に向けた広報機能強化、EXスコアのリアルタイム活用などの課題も残っています。人的資本経営×DXは、ヤマシタの経営戦略を実現する上で最も重要な活動です。私たちは、単にナンバーワンを目指すだけでなく、この取り組みを業界全体に広めていきたいとも思っています。リーダー企業が増えることが世界を変えるための原動力になり、可能性を拓くと信じています。
ヤマシタ 人財本部副本部長 菅原聡氏
日本大学商学部卒業後、米Quantic School of Business and Technology にてExecutive MBAを取得。IT 関連企業で、営業、マーケティング、企画の責任者を担当したのち、Tata Consultancy Services、Amazon、W.L. GORE の日本法人で人事・人財開発領域の責任者を務める。2022 年4月、ヤマシタに入社し、人財本部で経営戦略を実現する人財戦略策定、組織設計、人事業務のデジタル化などに取り組む。23年4月より現職。