2024年2月28日号 3面 掲載
24年改定項目が決定/斉藤正行氏
長期視点では報酬削減土台固めを
2024年度介護報酬改定における見直し項目が全て決定しました。全体改定率1.59%が割り振られ、ほとんどのサービスで基本報酬はプラスとなり、新たな加算創設や既存加算の拡充など、総じて歓迎できる内容となりました。とりわけ、特養や老健などの施設は、大きな報酬プラスとなります。また、処遇改善加算が1本化され単位数も大幅引き上げとなり、他産業の賃上げに引けを取らない対応が可能となります。
しかしながら、直近の介護事業経営実態調査による収支差率が高かった「訪問介護」「定期巡回」「夜間対応型訪問介護」「訪問リハ(予防のみ)」の4サービスは、まさかの基本報酬のマイナスとなりました。全国3万6000を超える訪問介護事業所のマイナスは、地方の在宅介護の現場崩壊に繋がりかねないと強い危機感を覚えます。
全体として、今回の改定にタイトルをつけるなら、「賃上げ改定」という表現が適切であると思います。事業者は新処遇改善加算を確実に算定し、公平かつ適正な評価に基づき職員に対して納得感ある分配を行うと同時に、分配方法の丁寧な説明が大切です。
また、今回の改定内容は6年に1度の同時改定でありながら、前回ほどの変革インパクトはありません。しかし改革の歩みが減退しているのではありません。4つの基本的視点である「地域包括ケアシステムの深化・推進」「自立支援・重度化防止に向けた対応」「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」「制度の安定性・持続可能性の確保」に基づいた見直しは着実に実施されます。例えばLIFEに関連した科学的介護推進体制加算は、入力項目の簡素化や提出時期の統一、フィードバックの充実が行われる予定です。前回改定の課題を整理し、着実に現場でのLIFE定着を目指す方針です。
一方、踏み込んだ改革が進められたテーマは「生産性向上」「DX推進」です。居宅介護支援における逓減制のさらなる拡大、施設におけるロボット・ICT機器活用による新加算の創設、特定施設における3対1の人員配置要件の特例緩和など、現場の変革が求められます。
今回の改定は、「将来の大変革に向けた土台固めの改定」とも言えます。コロナ禍や物価高騰による大きな社会情勢の変化によりプラス改定となりましたが、長期視点では報酬削減とともに大きな制度改革が行われます。今回のプラス改定を変革に向けた土台づくりを行うための3年間であると理解し、運営の変革が不可欠であると肝に命じなければなりません。
斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。