2024年2月14日号 2面 掲載
介護報酬改定2024<私はこう見る> / 定期巡回・随時対応型訪問介護看護協議会 津金澤寛副理事〈前編〉
2024年1月22日の社会保障審議会介護給付費分科会(第239回)において、24年度「介護報酬改定における改定事項」が発表された。定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下・定期巡回)における改定事項や留意点、今後の方向性などについて、一般社団法人定期巡回・随時対応型訪問介護看護協議会(東京都新宿区)の津金澤寛副理事長からの特別寄稿を前後編に分けて紹介する。
総合マネジメント加算、新体系に 「取得ハードルは低く」
定期巡回に関する主な改定事項は以下の15項目。
また、全サービス共通事項のなかで定期巡回に関係する項目として以下5項目が示された。
これらの項目に対しいくつかの意見を述べる。
まず、①総合マネジメント体制強化加算の見直しについてであるが、既存の1000単位がなくなり、新たに加算(Ⅰ)1200単位及び加算(Ⅱ)800単位が設定された。今まで通りの体制では加算(Ⅱ)の算定しかできないので、加算(Ⅰ)取得の取り組みを行わなければ200単位の減算になる。新加算(Ⅰ)取得のハードルは低いので、運営事業者には必ずこれを取得してもらいたい。
この加算に係る話は、23年10月23日の社会保障審議会に提出された資料が発端となり正式に議論が開始された。この資料の中では、本加算を「基本サービス費として包括的に評価」する方向性が示されたため、我々は関係団体とも協力しながら直ちに反対意見を表明した。その後も関係者らと様々な形で議論を重ね、現行の1000単位の加算は、新加算(Ⅰ)1200単位、(Ⅱ)800単位となることとなった。加算(Ⅱ)の取得については現行加算を取得できていれば引き続き算定可能だと思われるが、新加算(Ⅰ)を取得する要件は新加算(Ⅱ)の要件及び必須要件2項目(図表のうち(1)~(2))に加えて、選択要件(図表のうち(3)~(6))1項目の合計3項目を取得する必要がある。
必須要件の1つ目として、(1)「日常的に利用者と関わりのある地域住民等の相談に対応する体制を確保している」ことが求められる。
事業所の玄関入口やロードサイドに「高齢者や介護保険の相談に応じます」と掲示したり、「個人情報に関するルールを遵守し、利用者の許可も得たうえで、契約利用者の近隣住民や民生委員に対し事業所の連絡先や相談窓口を伝えておく」などの対応が新たに必要となるだろう。
この点は個人情報保護との兼ね合いが厳しいので、保険者に「どこまでの情報共有なら許容範囲で、かつ加算の対象根拠となるか」を事前に確認すべきだ。
必須要件の2つ目として(2)「地域住民との連携により、地域資源を効果的に活用し、利用者の状態に応じた支援を行う」ことが求められる。上記(1)が、いわゆる「相談体制」に言及しているのに対し、(2)は「地域資源の活用」と「状態に応じた支援」なので、より具体的に実施された加算要件を満たす実績が求められると見込んでいる。
もっとも、介護保険で言うところの地域資源とは「利用者の生活を支えているが、保険対象となっていない全ての事象」であることから、「認知症SOSネットワーク」など利用者が触れている何らかの住民参加型の地域資源が想定できるので、こちらのハードルも低い。
選択要件については、次の4項目のうち1項目以上を実施することとされている。
図表の(3)は小多機や看多機が「交流の場」を要件にしていることに対し、定期巡回では「交流を行っていること」とされており、こちらも着手しやすい内容となっている。また(4)や(5)は既に実施されている同内容の会議を主体的に実施したり、参加したりするなどで算定できると考えている。
ここで特筆すべきは(6)の「住まいに関する相談」だ。定期巡回サービスを全ての介護のOS的な役割としてとらえた場合に、居所に関する支援は必要不可欠と考えている。具体的には「居住支援法人の指定を取得し居住支援を実施」すべきである。高齢者の人生の満足度は居所変更せずに暮らしを継続することにあり、その点においても居住支援に係るサービス提供は今後の展開として大きな可能性を含んでいる。事業者には是非とも取り組んでもらいたい項目と考えている。
次に③業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入について。
いわゆるBCPが3年の経過措置を経て予定通り監査対象になる運びだったが、新たに「25年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しない」ことになった。
つまり24年度から開始されるはずだったBCPが、25年度からの実施になり1年間経過措置が延長された。ただしこれは、訪問系サービス、福祉用具、居宅介護支援に限定した話である。
次に④高齢者虐待防止の推進について。
現行、特に定めのなかった項目であるが、改定後の24年度からは「高齢者虐待防止措置未実施減算」として所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算することになった。
以下の4項目が講じられていない場合に減算の対象となるので注意が必要だ。
なお、この結果は介護サービス情報システムに登録すべき事項となり、集団指導に不参加の事業者に対しては集中的指導が行われることに留意してもらいたい。
次に⑥訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算の見直しについて。
現行の加算(Ⅰ)(Ⅱ)と単位数の変更はないが、算定要件に変更があった。
加算(Ⅰ)については対象の高齢者は「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の者」と限定されたことに加え、加算(Ⅱ)については「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が100分の20以上」と算定要件が追加された。
本加算は従来「取得の難しい加算」であったが、更にハードルが上がってしまい大変に残念である。改めて取得可能性を考慮した算定要件を希望する。
次に⑦訪問系サービス及び短期入所系サービスにおける口腔管理に係る連携の強化について。
「口腔連携強化加算」(50単位/回 1月に1回限り算定可能)は、本改定で新設された加算であり、算定要件は以下の2項目。
つまり介護職が訪問した際に、利用者の口腔内を確認すること。確認したら記録して訪問診療を行っている歯科(と契約した上で)に毎月報告書を提出すること。また利用者の口腔状態で相談すべき点があれば随時、歯科に相談できる体制(つまり契約)を保つこと――の3点であり、こちらも取得のハードルは低いだろう。
〈後編に続く〉