2024年1月24日号  11面 掲載

【経営戦略を実現する人財戦略】戦略的人事のフレームワーク/ヤマシタ 菅原聡氏

2024年2月2日

 

社員価値の向上がKPIに影響

 

今回は、人財戦略の取り組みが経営戦略にもたらした効果について、ヤマシタで活用しているフレームワークとともに紹介します。ヤマシタが長期ビジョンで掲げるEXをCXに繋げるマネジメントのメカニズムを明らかにする手法として、BSCと成功循環サイクルがあります。

 

まず、BSC(バランスコアカード)は、財務、顧客、プロセス、人財の連関性を高めた経営管理手法です。トップダウンアプローチで、長期ビジョンを実現する財務目標を設定し、その財務目標から逆算して顧客、プロセス、人財のKPIとCSF(重要成功要因)を計画します。人財の視点では、出店数からマネジメント人数、マネージャー要件充足者のパイプライン人数、成長速度などをKPIに設定し、人財の量・質・時間の軸でマネジメントを行っています。

 

一方、成功循環サイクルは、組織が成果を上げ続けるために必要な要素とプロセスを明らかにしたものです。ボトムアップアプローチで、BSCで設定したKPI、CSFの実行可能性を高めるため、全社の目標を各営業所、チーム、個人に因数分解し、目標の質、関係性の質、思考の質、行動の質、そして結果の質をマネジメントします。

 

具体例として、新規受注を向上させる取り組みを紹介します。福祉用具営業の新規売上を高めるための最善の方法として、「売上力強化の型」を設定しました。各営業所で型の定着に取り組み、顧客へのコンタクトの質・量・タイミングを改善しました。2023年4月から全30回、280名のマネージャーに対するトレーニングを実施。トレーニングは、現場の活動そのものを対象に、業務課題を事前に集約し、研修で課題の深掘りや解決策の議論を行い、研修終了後に現場で活用するものです。各営業所に入り行動変容の状態について現地現物、日次でフィット&ギャップの見極めを行いました。

 

その結果、社員の行動変容によって、顧客とのコンタクト量が平均2.5倍、ヒアリングの質も向上し、半年で新規契約数を昨年比126%に向上させることができました。

 

このように“管理機能”としての部門人事ではなく“価値創造機能”を担う戦略的人事として社員価値を向上させることで、財務、顧客、プロセスといった経営戦略上のKPIに影響を与えることができます。

 

 

 

ヤマシタ 人財本部副本部長 菅原聡

日本大学商学部卒業後、米Quantic School of Business and Technology にてExecutive MBAを取得。IT 関連企業で、営業、マーケティング、企画の責任者を担当したのち、Tata Consultancy Services、Amazon、W.L. GORE の日本法人で人事・人財開発領域の責任者を務める。2022 年4月、ヤマシタに入社し、人財本部で経営戦略を実現する人財戦略策定、組織設計、人事業務のデジタル化などに取り組む。23年4月より現職。

 

 

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