【経営戦略を実現する人財戦略】人財成長を加速させる3つの時間概念/ヤマシタ 菅原聡氏
成果までのタイムラグをマネジメント
前回はヤマシタの経営戦略を実現するための人財戦略の1つとして、成長加速に向けた取り組みについてその成果をご紹介しました。今回はその成長加速の取り組みの具体的な内容を3つの時間軸の考え方を用いてご紹介します。
3つの時間軸の1つ目は成長速度です。例えば、新人のひとり立ちに1年かかっていたのが、4ヵ月間成長速度が速まった場合、売上貢献ゼロがから年間の生産性で20%の貢献へと伸ばすことができます。これにより、採用コストの回収期間を短縮でき、新入社員の自己効力感も高めることで定着度が上がる可能性もあります。
ヤマシタでは、「ひとり立ちガイドライン」を設定し、全14項目の要件から逆算して計画。ここで重要なのが研修と実践の連携で、研修において修得する業務の実践機会を事前に計画し、進捗を管理します。一拠点でカバーできない部分はほかの拠点が支援する体制を作り、成長速度を上げる工夫をしています。
2つ目は、活動から成果が出るまでのタイムディレイ(遅延時間)です。例えば、営業活動においては、活動が成果につながるまでにはタイムラグが発生します。何回訪問した後で受注に至るかをマネジメントできると、成果が出るまでの訪問で行う活動の詳細設計を最適化することができます。
現在ヤマシタでは、この活動を「売上力強化の型」としてメンバーが行い、リーダー・所長による適切な支援までを体系化しています。7つの営業所でトライアルを実施した結果、5つの営業所で昨年度対比、平均130%の売上向上を実現したため、現在では全営業所で展開を開始しています。
3つ目は、成長支援時間です。成長支援は優秀層が担当するため、成長支援の期間が短縮されると優秀層の生産時間が増加します。成長支援活動の結果は、週次の成長支援会議で共有を行います。ひとり立ちガイドの要件習熟度や本部からの支援活動も含めて、タレントマネジメントシステム上で一元管理しており、支援時間を短縮する成功事例の展開に活用しています。
次回は、上記の活動を実施する際に多くの会社で課題となる、成長支援の時間捻出を行うための取り組みとして、人事関連業務のデジタル化や成長支援効果を上げるためのAI活用をご紹介します。
ヤマシタ 人財本部副本部長 菅原聡氏
日本大学商学部卒業後、米Quantic School of Business and Technology にてExecutive MBAを取得。IT 関連企業で、営業、マーケティング、企画の責任者を担当したのち、Tata Consultancy Services、Amazon、W.L. GORE の日本法人で人事・人財開発領域の責任者を務める。2022 年4月、ヤマシタに入社し、人財本部で経営戦略を実現する人財戦略策定、組織設計、人事業務のデジタル化などに取り組む。23年4月より現職。