【経営戦略を実現する人財戦略】価値創造機能を担う人事部門ヘ/ヤマシタ 菅原聡氏
新人がひとり立ちするまでの期間短縮
今回はこの連載のタイトルである「経営戦略を実現する人材戦略」に関連する考え方、“HRBP(Human Resource Business Partner)”についてご紹介します。従来の人事は、労務管理や人員配置などを効率的に運用・管理することがミッションでした。これに対して、HRBPは経営者や事業責任者、事業部門のパートナーとして経営や事業部の要望に応えるだけでなく、事業成長に向けて潜在的な課題を引き出し解決していくことがミッションです。このようにHRBPは“管理機能”としての部門人事ではなく“価値創造機能”を担う戦略的人事である点で従来の人事とは大きく異なります。特に介護サービスにおいては、人件費率が高いため、組織・人財の生産性を向上させることが戦略実現のカギになります。
ヤマシタでは、「長期ビジョン2030」で売上を7年で約3倍にする意欲的な目標を掲げています。HRBPにおいては2030年の売上・利益計画から逆算し、顧客、業務プロセスの設計を行い、現在と将来の差分について量の拡大と質の拡充の観点から各年次の組織・人財構成を作成。これらを充足させるために、成長支援、昇格、採用、配置、評価をマネジメントに注力しています。
取り組みの1つとして、昨年から新卒営業職が入社して独力で業務を行い戦力化するための期間を短縮する施策を実施しています。21年度は12ヵ月間で約8割の方がひとり立ちしていましたが、22年度は10ヵ月で100%の方がひとり立ちに成功。成長期間を約17%短縮でき、成長支援のためのサポート業務を削減することができました。23年度はさらに20%の期間短縮を行い、定着率を向上させることを目標としています。こうした成長加速の取り組みは、福祉用具をお使いいただく【感動体験】を早く提供できるようになることで、EX=仕事のやりがいを高めるとともに、会社としてお客様の獲得や売り上げの向上にもつながっています。言い換えると、社員、お客様、会社の「命の時間」の価値を高めていくことになると考えています。
今回はHRBPの役割について、一般的な定義と当社の取り組みの概要と意義についてご紹介しました。次回は成長加速の取り組みの具体的な内容や取り組む上での3つの時間軸について、ご紹介したいと思います。
ヤマシタ 人財本部副本部長 菅原聡氏
日本大学商学部卒業後、米Quantic School of Business and Technology にてExecutive MBAを取得。IT 関連企業で、営業、マーケティング、企画の責任者を担当したのち、Tata Consultancy Services、Amazon、W.L. GORE の日本法人で人事・人財開発領域の責任者を務める。2022年4月、ヤマシタに入社し、人財本部で経営戦略を実現する人財戦略策定、組織設計、人事業務のデジタル化などに取り組む。23年4月より現職。