新連載【経営戦略を実現する人財戦略】人財領域で業界の旗振り役/ヤマシタ 菅原聡氏
成果に繋がるメカニズムとは
皆さま初めまして。この連載ではタイトルを「経営戦略を実現する人財戦略」と付けさせていただきました。これは近年重要視されている人的資本経営の考え方です。皆さまご存知の通り、介護産業において人の生み出す付加価値は非常に大きく、福祉用具においてもそれは同様です。それゆえに、経営戦略の実現に人財戦略が及ぼす影響も大きいと考えています。
ヤマシタでは長期ビジョンとして“EX→CXを強みに非連続へ”をスローガンに、従業員のEX(仕事のやりがい)を高め、顧客体験価値(CX)に繋げファンを増やし、ビジネスの成果に繋がるメカニズムを構築しようとしています。
私がヤマシタに入社したのは約1年前、人的資本経営にアクセルを踏み始めた頃でした。これまで私は人事・人財責任者として、「経営戦略を実現するための人事戦略」に取り組んでいました。
例えば、流通業では、顧客が商品を発注した日に商品を出荷・お届けすることは、お買い物体験を上げる一つの要素です。商品を当日中に届けるには、流通設備を整備することと設備を運営する人材確保が必要です。中でもマネジメントの配置は重要ですが、育成には時間がかかります。これを解決するために、現場と人事で協働し、育成・昇格速度を倍にするモデルを作り、出店速度向上に貢献しました。このように人財の視点からの取り組みは、ビジネスプロセスを改善し、顧客の体験を上げ、ビジネス成果の達成に貢献することができます。
介護業界は、今後20年で要介護人口が1.5倍になる一方、給与水準は14業種中10番目(国税庁の調査)となっており、相対的に低くなっています。そのため人材が集まりにくく、2040年には約69万人の介護人材が不足するという試算もあります。こうした業界のビジネスモデルやプロセスには人財の視点から大きく改善できる可能性があります。私は業界の変革に人財の視点から貢献することで、豊かな超高齢社会を実現したいと考えています。
次回以降は、HRBP(Human Resource Business Partner)といわれる経営者や事業責任者のビジネスパートナーとしての人事のあり方や、労働生産性向上に人事がどう寄与するのかなど、介護業界における人財戦略を中心にお話していきます。
ヤマシタ 人財本部副本部長 菅原聡氏
日本大学商学部卒業後、米Quantic School of Business and Technology にてExecutive MBAを取得。IT 関連企業で、営業、マーケティング、企画の責任者を担当したのち、Tata Consultancy Services、Amazon、W.L. GORE の日本法人で人事・人財開発領域の責任者を務める。2022 年4月、ヤマシタに入社し、人財本部で経営戦略を実現する人財戦略策定、組織設計、人事業務のデジタル化などに取り組む。23年4月より現職。