【福祉用具サービスの真価】福祉用具の企業経営/ヤマシタ 山下和洋氏
事業承継による持続的な介護の実現
日本の介護の持続可能性を考えたときに、人手不足問題は皆さん大きな課題として認識されていると思います。今回は人手不足問題の中でも特に後継者不足について、私自身会社を継いだ者として体験談をお伝えさせていただきます。
ヤマシタは約60年前に祖父が起こした会社を私の父が引き継ぎ、そして今は私が3代目として社長をしています。ヤマシタには大学卒業後、新卒で入社したのですが、父である先代社長の急逝により、入社3年目の25歳で社長を引き継ぐことになりました。
就任当時は、シェアの伸び悩み、システム整備不足、マネジメントの機能不全などの課題が山積みでした。その中でまず行ったのは、都市部にリソースを集中し、目標達成意識を醸成するということでした。
その中で、システムによる業務標準化や新たな方針に沿った形に人事制度も再構築を行い、方針を現場の従業員が納得できるように翻訳することをマネージャーに求めました。方針転換してすぐは、一度シェアが下がりましたが、半年後には数字が回復し始め、その後利益を就任当初の4倍にまでアップさせることができました。
変革期に重要なのは、組織の適応能力のバランスを見ながらアクションを行い、それを継続していくことだと考えています。また、時代とともに状況は変化していくため、課題が完全に解決するということはなく、改善を続けていくことも重要です。現在では、そうした経験を還元すべく社外の若手後継者メンターとしての活動も行っています。
一方で、ヤマシタの承継以外にも、M&Aという形で他社の事業承継も行ってきました。福祉用具レンタル事業は規模が大きくなるほど、お客様に提供できる価値も最大化できるためです。私の社長就任以降、これまで24社の同業他社に仲間に加わっていただいています。
社内承継でも、M&Aのような社外承継でも経営者が変わるタイミングは従業員にとっても負担や戸惑いが大きいものです。それでも持続可能な介護を実現し、より多くのお客様の自己実現をサポートするべく、今後もM&Aなど積極的に事業を承継していきたいと思います。
山下和洋
株式会社ヤマシタ 代表取締役社長
2010 年慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、 株式会社ヤマシタ入社。2013 年、先代社長であった父が急逝し、25 歳の若さで代表取締役社長に就任。小学校で社会保障制度に関する卒業論文を執筆。2020 年、ダイヤモンド経営者倶楽部「Managementof the year」を受賞。先代社長は福祉用具専門相談員全体のレベル向上を目指す職能団体「ふくせん」を発起人として設立。