【福祉用具サービスの真価】福祉用具の有用性と専門性③/ヤマシタ 山下和洋氏

2022年9月30日

AIアプリを使った歩行解析

 

根拠に基づく科学的介護の必要性はこれまでも訴えられ続けてきたが、2021年は介護業界全体にとって転換を迎える年となった。LIFE(科学的介護情報システム)が導入され、国が本腰を入れ始めたことで科学的介護への対応は避けて通ることのできない課題となった。

 

現在このLIFEに福祉用具貸与独自の項目は含まれていないが、当社はこの科学的介護の実践に対して独自の取り組みを時を同じく始めている。それが、歩行解析AIアプリ「トルト」の活用だ。

 

トルトはスマートフォン5mの歩行の動画を撮影・アップロードするだけで、転倒リスクに関する「速度」「リズム」「ふらつき」「左右差」の4つの指標で歩行をAIが解析する。解析にかかる時間はたったの2分で、ホコ点として点数で結果がわかる。21年5月にはトルトを開発したエクサウィザーズと合弁会社「エクサホームケア」も設立している。ヤマシタ約60年の歴史の中で、テック企業との合弁会社設立は初めての試みだ。

 

 

 

トルトは福祉用具の選定などで利用されている

 

 

当社でのトルトの活用シーンは大きく3つある。

 

まず1つ目が福祉用具の選定時だ。トルトの解析を行うことで利用者が自身の状態を客観的に認識することができ、福祉用具の使用に納得感を持つことができる。2つ目はモニタリング。同一利用者に対して、トルトを使ったモニタリングを行うことで、半年間で本人の歩行状態がどう変化したのかサービスを検証できる。3つ目が多職種や社内の情報共有においてだ。

 

トルトには動画共有機能もあり、これまでは口頭や文字ベースで報告していたところ、動画が加わることでより正確に情報を伝えることができる。さらに、社内の人材育成においても動画を活用したフィードバックができるようになったことでより適切なアドバイスが可能になっている。

 

活用を始めて約1年が経過した現在では、1ヵ月当たり約2000人の撮影・解析を行っている。これまでの累計では1.2万人を超えた。地域包括支援センターに協力する形で、地域の一般高齢者の歩行解析の引き合いも多く、地域包括ケアシステムにおける我々の存在価値向上にも寄与していくことを期待している。

 

 

 

 

山下和洋
株式会社ヤマシタ 代表取締役社長

2010 年慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、 株式会社ヤマシタ入社。2013 年、先代社長であった父が急逝し、25 歳の若さで代表取締役社長に就任。小学校で社会保障制度に関する卒業論文を執筆。2020 年、ダイヤモンド経営者倶楽部「Managementof the year」を受賞。先代社長は福祉用具専門相談員全体のレベル向上を目指す職能団体「ふくせん」を発起人として設立。

 

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