【連載第16回 高齢者虐待問題~私はこう考える~】サンキ・ウエルビィ 川本康晴社長
「職員の業務に新鮮な風を」 変わった仕事で新たな交流も
――虐待問題の原因は何だと思いますか
川本 仕事が単調になり、職員の気持ちが淀んでしまうことがひとつの要因だと思います。介護の仕事は日々、同じ場所で同じ相手と長く過ごすことになります。環境に変化がなくストレスが解消できなかったり、感覚が麻痺してしまったりしてしまうということがあるのだと感じます。
また、閉鎖的な環境も要因のひとつだと思います。施設や事業所によっては相談できる相手がいなかったり、おかしいと感じることをおかしいと言い出しにくい空気が蔓延したりすることもあるかと思われます。
――事業者はどのような対策が可能でしょうか
川本 前者については、個人の姿勢や責任論に終始せず、職員参加型の企画を考えたり、事業やサービスの方向性について耳を傾けたりするなど新鮮な気持ちを持って仕事に向き合う仕掛けづくりに取り組むことが重要だと考えています。
後者については、施設の外に相談する場所を整える必要があるでしょう。当社では社内外の相談窓口を設け、社内通報制度を整えています。
――ほかに御社での取り組み事例は
川本 故意による虐待はもってのほかですが、「アクシデント」を未然に防ぐためには職員のプロ意識を高めていくしかないでしょう。地道ではありますが、ヒヤリハット事例の報告と啓発を全事業所でリアルタイムで共有しています。研修にも力を入れており職種別・職階別に体系的な研修制度を整えています。
――職員のモチベーション維持・向上も重要な要素ではないでしょうか
川本 現場職員のアイデアで利用者に対する「長寿お祝い制度」を設けています。私とケアマネジャー、ケア職が利用者に直接白寿のお祝いの言葉を伝えに向かいます。お祝いの為の出張続きになってしまうこともありますが、利用者と家族に大変喜ばれています。
また、介護の仕事に対するイメージを明るいものにして、前向きに働いて欲しいという思いから現場の女性職員を紹介するフリーペーパーの作成「ウエルビィ女子」プロジェクトにも取り組みました。現場職員が編集を担当して、普段とは違った交流の機会にもなりました。経営層が現場の職員に関心を持ち、共闘する姿勢を示すことが職場の雰囲気向上に繋がると思います。