「新型多機能」創設を 大手社会福祉法人ら提言
地域包括ケア推進研究会設立準備委員会(委員長・社会福祉法人長岡福祉協会田宮崇理事長)は、5月20日厚生労働省老健局振興課に、要介護3以上の高齢者を対象にした「新型多機能サービス(仮称)」を創設することなどを訴える提言書を提出した。
小多機ニーズ「訪問」が増加
現在、在宅高齢者の生活を支える地域密着型サービスとしては、小規模多機能型居宅介護(以下・小多機)と、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下・24時間サービス)などがある。このうち小多機は、制度創設当初は「通い」の機能が中心になると思われていたが、近年は「訪問」の利用が多くなっている。一方、24時間サービスは、利用者数が思う様に伸びず、経営の厳しい事業所が多いといわれている。
この様に、両者とも制度創設当初とは利用者の状況が異なっていることに加え、利用者像や利用形態が接近してきたという現実を踏まえ、委員会では「制度を見直す時期に来ている」とし、新サービス創設を提唱している。
軽度者向けの訪介・訪看併設
提唱する新サービスは、具体的には、一定地域内に居住する要介護3以上の人を対象に、訪問・通いを中心に、泊まりも含めたサービスを柔軟に提供するもの。定員は、通い18人、泊まり9人。訪問は定員を設けない。また通い専門のサテライトを設けることで、通いについては18人以上の登録にも適応可能にする。
更に、この新サービスに、要介護2以下の高齢者を対象にした訪問介護・訪問看護サービスなどを加えた「地域総合支援拠点(仮称)」を整備することが、地域包括ケア実現の鍵になる、と提唱している。整備については
(1)市区町村が在宅医療の普及状況なども勘案した一定の日常生活圏域を選定し段階的に行うこと
(2)運営事業者は公募により選定すること
(3)一定期間ごとに成果を評価し、運営事業者を選定し直す仕組みを設けること
としている。
このほかにも提言書では「大都市圏と地方での賃金格差などを考え、現在の介護報酬の地域区分係数を見直すべき。具体的には東京都区内の1単位単価は10.9円と10%以下の嵩上げ率になっているが、15%の嵩上げ率にするなどして、介護人材を確保しやすくするべき」などといった点を訴えている。
同委員会は、長岡福祉協会が運営する高齢者総合ケアセンターこぶし園の小山剛総合施設長が昨年3月死去したことを受け、その意思を形にしたい、との思いから昨年8月に第1回会合を行った。以来今年4月まで9回の会合を重ねている。小山氏の3回忌である来年3月に「地域包括ケア推進研究会」を発足させる考えだ。